通常契約を交わす際には署名が必要になります。電子契約において日本で法的に認められているのは現在電子署名のみですが、EUではeシールも法制化されています。
今回は今後日本でも法制化が予想されるeシールについて、詳しく解説いたします。

eシールとは?

まずはeシールとはなにか、仕組みやメリットについて解説いたします。
eシールの説明の後はEUのeIDAS規則についても軽くご紹介いたします。

eシールの仕組み

eシールとは、文章など電子データの発信元となる組織を示すための暗号化などの技術で、会社でいう電子社印のようなイメージです。
eシールはEUのeIDAS規則に基づいて作成されており、個人ではなく法人にのみ発行され、付与したデータのシステムに組み込まれるようになっています。
作成されたデータにeシールを付与することで発信元である法人が分かるようになり、またeシール付与後にデータの改ざんなどが行われていないことの証明が可能となります。

eシールのメリット

eシールを付与することで電子契約書の真正性が証明され、より安全に他社にデータを送ることができるようになります。また、経理などの大量書類を処理する際、非常に効率的に処理が行えます。
eシールは個人ではなく組織に紐づくものなので、組織に属している限り部署を異動した場合も再発行手続きなどが不要でそのまま使い続けることができます。
また、新型コロナウィルスのような感染力の高いウィルスの蔓延により在宅ワークに切り替わった場合でも、eシールの導入を行うことで押印のために出社をすることなく在宅でも書類への押印が可能になり、従業員の感染を予防する対策にもつながります。

eIDAS規則とは

EU加盟国では電子取引を行う際の統一規格としてeIDAS規則が制定されています。そのため、EU加盟国であれば国外でも法的拘束力をもったまま電子契約を結ぶことが可能です。
eIDAS規則ではトラストサービスとして電子署名、タイムスタンプ、ウェブサイト認証、eシール、eデリバリーの5つが取り入れられています。

トラストサービスとしてのeシール

トラストサービスがどんなものか分からないという方に向けて、トラストサービスがどんなものか、eシールと交えてご説明いたします。

トラストサービスとは

トラストサービスは下記の2つの点を保証する技術サービスのことです。

①文書などの電子データが作成した本人だということを証明する本人性の確認
②データが改ざんされていないことの保証

総務省でも電子化が進む社会においてトラストサービスの技術を高く評価しており、推進する動きがあります。
トラストサービスの普及が進むことで、日本国内の電子契約をはじめとする電子取引がサイバー空間上でも安全安心なものとなることが期待されています。また、電子化を行うことで既存の紙を経由した手続きよりも業務効率が良くなり、生産性が高まると考えられています。

eシールと電子署名の違い

eシールと電子署名は同じトラストサービスですが、先述したようにeシールは法人に発行されるものです。一方、電子署名は法人ではなく個人が扱うものとなります。
eシールを付与する目的は発行元の証明ですが、電子署名を付与する目的は電子契約や電子書類上に記載された内容に同意するということなので、目的が全く違うといえます。

eシールとタイムスタンプの違い

eシールと同じく、タイムスタンプもトラストサービスの一種です。
違いとしては、タイムスタンプが付与された電子データが特定の時刻に存在することを証明し、その時刻以降データの変更や改ざんが行われていないことを証明するものです。
タイムスタンプを付与するのはデータを作った本人でも所属している会社でもなく、認定を受けた第三者機関になります。
eシールとタイムスタンプの違いは誰が付与するのかという点と、タイムスタンプは存在証明が目的となっている点が挙げられます。

国内におけるeシールの状況

便利なeシールですが、国内での利用状況はどうなっているのでしょうか。EUでのeシール活用事例と日本国内の状況を最後にご紹介いたします。

EUでの活用事例

EUでは電子決済サービスなどの金融サービスやヘルスケアといった情報システム間のデータ交換においてeシールの活用が進んでいます。
たとえば、2020年12月よりEUの決済サービス提供者は当該組織の正当性を確認するために認定eシール付与、または運営しているサイトが正当なものであることをウェブ認証で証明するよう義務付けられます。これにより利用者は決済サービスを利用する際、決済データの信頼性を獲得できるようになります。

国内の現状と認定制度

現在、日本で法として認められている制度は電子署名法のみです。
2020年2月に有識者会議の最終とりまとめが行われました。
現状ではeシールに対する前向きな意見が多いものの、eシールの利用が法令上必ず要件を満たすことが難しいことや、制度上の位置づけが難しく運用上の懸念があることなど、普及を進めるにあたりクリアすべき課題が多く残っています。
認定制度の設立には至りませんでしたが、eシールの認証業者に国が関与した基準に基づく民間の認定制度を創設することと、具体的な認定スキームについては本検討会を設置して検討することが決まっています。

今後の見通し

今後は企業間での電子データがやり取りされる状況を把握し、eシールが有効なシーンを検討、認定基準を議論し2021年中を目途に制度案を策定することが案として出されています。
ペーパーレスや電子化においてeシールの重要性がより高まれば、予定よりも早く制度が整うかもしれません。

まとめ

現在は法制化されていないeシールですが、eIDAS規則に倣った仕組みをもっているため、今後さらなる普及が期待されています。日本国内での運用はもちろん、国外にも通用する制度が整えば、生産性が上がるだけでなくグローバル化が一層進むと考えられます。eシールの法制化はこれからの日本において必要不可欠になるのではないでしょうか。

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