紙ベースの契約書では印影の存在が必須ですが、電子契約書では印影が不要なのかどうかわからないという人も多いです。
しかし、印影の必要性について正しく理解しておかなければ、適切な文書を作成できなくなってしまい、スムーズに契約手続きを進められなくなってしまいます。
そこで本記事では、電子契約書に印影が不要なのかについて、法的な有効性を考えながら説明していきたいと思います。

電子契約書で印影が不要な理由

結論から言うと、電子契約書では印影が不要となっており、その理由は以下の3つです。

1. そもそも電子データに押印できないから
2. 改ざんのリスクが高まるから
3. 法的な有効性があるから

これらの理由を理解した上で電子契約書を作成すれば、法的な根拠に基づいた適切な文書を作成できるようになります。
ここからは、電子契約書で印影が不要な理由について、詳しく説明します。

そもそも電子データに押印できないから

電子契約書は紙ベースの文書とは違い、電子データで保存されているため、そもそも押印することができません。
押印できない文書に印影を残すことはできないため、印影がなかったとしても契約書として成立するのです。

改ざんのリスクが高まるから

電子データで作成される契約書であっても、印影をデータで読み込んでおくことで、契約書に反映させることは可能です。
しかし、印影のデータはコピーして流用することが簡単なので、文書の改ざんリスクが高くなってしまいます。
それによって、思わぬ損害を受けてしまう可能性があり、印影を電子化するメリットは少ないのです。

法的な有効性があるから

電子契約書に印影を使用しなくても法的な文書として成立することには、電子署名法やe文書法などで担保されており、法律に基づいた書類を作成することで、証拠能力の高い文書として認められます。
電子契約書の法的な有効性を高めている要因には、以下の2つがあります。

1. 電子署名
2. タイムスタンプ

これらについて理解しておくことで、電子契約書の証拠力の高さを理解することができ、印影が不要であるということが分かるようになります。
ここからは、電子署名とタイムスタンプの概要について、詳しく説明します。

〇電子署名で本人確認が可能
電子契約書に電子署名を施すことで、文書が改ざんされていないことや、契約者本人の意思が反映された文書であることを証明できるようになります。

具体的には、ハッシュ値に変換した電子文書を、本人のみが持つ秘密鍵で暗号化して電子署名を施し、契約相手に送信します。文書を受け取った契約相手は、同じように文書をハッシュ値に変換したものと、受け取った人のみが使用できる公開鍵を用いてハッシュ値に変換して、2つの文書の整合性を確認することで、正式な文書であることを証明するのです。

電子署名の公開鍵証明書は、信頼性のある認証局が発行しているため、公開鍵が正式なものであるかを確認するためには、証明書の認証パスをたどって検証していきます。

〇タイムスタンプで作成日の立証が可能
電子署名に加えて、タイムスタンプを同時に付与しておくことで、信頼性のある認証局に書類が作成された日時を証明してもらうことが可能になります。
これによって、書類が作成された日以降に文書が改ざんされていないことを証明できるようになり、さらに契約書の真正性が高まるのです。

電子契約書でも印影が使われる理由

印影が不要であるとしても、契約者によっては印影を使用しているケースもあります。
電子化された文書でも印影が使われる理由は、以下の2つです。

1. 文書としての体裁が整って見える
2. 契約が締結した文書であることが分かりやすい

ここからは、電子化された文書でも印影が使われる理由について、詳しく説明します。

文書としての体裁が整って見える

電子契約書であっても印影を施していると、文書としての体裁が整って見えます。
印影がある文書は、文書として正式なものであるという雰囲気や、よりフォーマルな印象を与えるのです。
会社の慣例や契約相手のニーズによっては、体裁を気にするケースもあるため、状況に合わせて印影を使用すると良いでしょう。

契約が締結した文書であることが分かりやすい

電子契約書に印影を施すことによって、契約が締結した文書であることが分かりやすくなります。
印影が施されていないことで、社内の業務連絡用の文書だと勘違いされたり、作成途中の契約書だと思われたりする可能性もあります。そのため、締結済みの契約書であることをしっかりとアピールしたい場合、印影を使用してしっかりとアピールすることも大切です。

印影が不要な理由を理解して電子契約書を利用しよう

本記事では、電子契約書に印影が不要である理由や、印影の無い電子契約書でも正式な文書として成立するかどうかについて説明しました。
ここで説明した内容を参考にして、必要に応じた印影の使用方法が選択できるようにしましょう。

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