eIDAS規則って?導入することで電子契約がどう変わるのかを解説!
インターネットを介した取引が普及するにつれて、電子契約を行う際に必要な電子署名やタイムスタンプなどの見直しが検討されています。
その参考になったのがEUで適用されているeIDAS規則です。
今回はeIDAS規則について、日本で導入する際にどう影響するのかを詳しく解説いたします。
eIDAS規則とは
まずはeIDASの規則や電子契約に欠かせない電子署名について、基礎的な部分をご紹介いたします。
eIDAS規則とは
eIDAS規則とはEU加盟国内において電子取引に設けられている規則のことです。
国や文化の違いがあってもeIDAS規則によって電子取引が統一され、共通の法的効力を持たせることが可能になりました。
eIDAS規則では特定要件を満たす「トラストサービス」と呼ばれるサービスに対して法的効力を与えており、その特定要件の一つに電子署名が含まれています。
電子署名とは
電子署名には2つの役割があります。
①契約者を誰が作成したのかを証明する役割
②契約書に改ざんが行われていないことを証明する役割
電子署名は電子認証局から発行された電子証明書を用いて電子契約書に付与することで、電子署名法の基準を満たすため、手書き署名と同じ法的効力が発生します。
トラストサービスとは
トラストサービスとは、デジタル社会であらゆるやり取りが電子化される中、サービスの保証を行うためにデータが改ざんされていないこと、データが信頼できることを証明するための技術サービスです。
日本では総務省がデジタル化社会に対応できるよう、このトラストサービスの導入を促進する動きがあります。
eIDAS規則のポイント
eIDAS規則のポイントは主に以下の5点があげられます。
①加盟国に直接効力をもつ
EUでは電子署名指令という法が発令されていましたが、デジタル社会において統一した基準ではなかったため廃止されました。統一基準として新たに「電子本人認証」と「トラストサービス」の2つを制定し、国外でも直接的に効力をもつ規則となりました。
②法的効力
eIDASはトラストサービスに法的効力を与えました。
その結果、電子契約書であっても紙の契約書と同様に法的効果をもつようになり、裁判などで証拠として扱うことが可能になりました。
③EU統一の基準と適格性を確認することが必要
EUのように複数の国で形成された組織において、国ごとに基準が異なると電子契約も国内のみでしか通用しなくなってしまいます。そのため、eIDASではEU加盟国に国家監督機関を置き、トラストサービスがEU内の統一基準に沿ったものであるか、評価と監査を受けることが必要になりました。
このような取り組みがあることで、EUは複数の国家で形成されていてもオンライン上の契約が法的効力をもったまま問題なく国内外問わずに利用することができるのです。
④マシンリーダブル
EUでは加盟国家ごとに適格トラストサービス事業者およびサービス情報をまとめたトラステッドリストを作成し、統一フォーマットで管理と告示を行うことと、リスト内情報をマシンリーダブル(webコンテンツ内で記載されている情報が確認できる状態のこと)として電子署名またはeシールを付すこと、さらに各国のリスト情報が公に広く開示されている状況を作り出し、不備や不正がないことを明らかにすることなどを規定しています。
⑤リモート署名の認定
リモート署名は信頼性の高いサービスを提供する事業者および仕組みの下で管理されているため、経済的効果を生む価値は高いと評価されています。
つまり、通常の電子署名と同等レベルの法的効力を持つためリモート署名であっても使用が認められるということになります。
「日本版eIDAS」を検討中
ここでは日本で導入されようとしている日本版eIDASと、導入に対する課題をご説明いたします。
新しい規律が制定される?
EUで導入されているeIDASに倣い、日本でもeIDASと似たような規律が制定されようとしていることはご存知でしょうか。
総務省では「トラストサービス検討ワーキンググループ」という組織によって、国内の電子契約における統一規格の内容を議論しています。
様々なことが電子化される中、電子契約や電子署名においても今後さらなる普及を踏まえて強固な規律が必要とされています。日本でもeIDASに似た規律が誕生する日は遠くないといえるでしょう。
日本版eIDAS
日本では電子署名と認定タイムスタンプが存在しています。また、一般財団法人日本情報経済社会推進協会はEUのeIDAS規則に基づく適格eシールを導入したことを発表しています。
しかし日本では2000年にアメリカのE-Sign法の影響を受け、電子署名や認定タイムスタンプなど特定の技術等に介入しすぎない「技術的中立法」を重んじています。よって、現在の日本ではあえて厳格な条件や規律がないまま現在に至っています。
導入する際の課題
より電子契約等の取引に法的効力をもたせるためには、以下のことが課題として挙げられています。
①法的な強い効力のある要件が制定されることでトラストサービスの柔軟性が失われ、結果的に経済発展を妨げる可能性がある。
②国際的な取引を行う際に相手国家との相互運用が難しい。
③廃業した場合でも電子署名やタイムスタンプなしで保証が継続するのか。
④国家による信頼性の裏付けに欠ける。
上記の問題点以外にも、情報漏洩などを懸念する声があがっています。
電子契約を法的効力のあるものにするには、国内だけではなく国際基準に合致しなければ、相手側の国家に有利な立場を与えてしまいかねませんので、慎重にならざるを得ない状況です。
まとめ
電子契約により法的効果を持たせるeIDAS規則を確立するにはまだ課題があり、しばらく時間を要することでしょう。
しかし、世界各国で猛威を振るった新型コロナウィルスの影響により、国が企業にリモート業務を推進する中、実際にリモート化を行った企業は全体の20~25%といわれています。また、リモートワーク中であっても書類に判を押すためや、署名のために出勤せざるを得ない環境にいた従業員もいます。
このような事態を避けるためにも、日本版eIDASは必要といえるのではないでしょうか。