近年導入が増えている電子契約書は、不動産売買で用いられる契約書でも利用される場面が出ています。そこで、紙の契約書から電子契約書に移行する理由、導入のメリットについて解説します。

不動産売買で電子契約書導入が進んでいる理由について

不動産売買では、必ず契約書で契約成立を証明します。契約書は通常、紙で作成されたものに押印をするのが一般的ですが、近年さまざまな書類が電子化されています。不動産売買に関する契約書も例外ではなく、不動産においても電子契約書の導入が進んでいます。

国土交通省が書面の電子化の社会実験を開始

従来、契約書は紙ベースで作成するのがごく普通でした。しかし、近年は電子契約書の導入が推進されています。その理由の一つが、国土交通省が開始した社会実験です。

2019年10月1日より、国土交通省は書面の電子化にかかわる社会実験を行っています。一つは「個人を含む売買取引におけるIT重説」で、これは売買取引における重要事項説明をITを活用して実施するというものです。
もう一つは「賃貸取引における重要事項説明書等の電子化」で、こちらは賃貸取引時に交付される重要事項説明書を電子化するという社会実験です。
これらの社会実験を契機に、電子契約書の導入が進んでいるのが現在の状況です。

契約書は必ずしも書面で作る義務はない

契約書といえば、紙で残す必要があるものと考えている人は多いことでしょう。しかし、法律上は必ずしも書面で作ることと定められているわけではありません。つまり、電子契約書でも契約締結は可能といえるのです。

電子書面交付サービス提供事業者が増加中

行政機関でも電子化を進める社会実験を実施している背景があるように、今後不動産取引で電子契約書が登場するケースは増えることが予想されます。実際に、電子書面交付サービスを提供する事業者も増えています。
そのため、さらに不動産取引における電子化は進んでいくものと考えられます。

不動産売買に電子契約書を導入するメリット

電子契約書導入には、紙の契約書では得られないさまざまなメリットがあります。契約にかかるコストにも大きくかかわる部分なので、電子契約書のメリットは押さえておきたいポイントです。

印紙税がかからない

不動産売買において、契約金額が1万円以上の契約書には印紙税が必要です。売買価格が上がると、その分印紙税も高額になり、印紙税だけで多額の負担を生じるケースも少なくありません。
しかし、印紙税がかかるのは紙の契約書の場合です。電子契約でのやり取りではペーパーレスの契約となるため、印紙税を支払う必要がありません。印紙税の負担が大きかった企業にとっては、電子契約書の導入で大幅に契約にかかるコストを下げられるのです。

負担カットで働き方改革につなげられる

不動産契約では、契約書を作成するとそれに伴う発送・回収などの作業も発生します。これらの作業には人の手が必要であるため、人件費がかかるばかりか、従業員の負担も大きくなることがあります。
電子契約書を導入すると、紙の契約書で必要だった発送・回収作業は不要となり、契約にかかわる作業をすぐに終わらせることも可能です。従業員にとって負担となっていた仕事を減らせることで、働き方改革につなげることもできます。

印鑑不要で契約ができる

不動産契約に限らず、契約書には印鑑を押す必要があるものです。しかし契約書を電子化すると、押印が必要なくなります。

電子契約書ではどのように契約書の真正性を証明するのかというと、押印の代わりに電子署名を使用します。これは、電子署名法第3条で「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」と定められています。

電子契約書なら対面での重要事項説明が不要に

不動産契約で必ず行わなければならないことの一つが、「重要事項説明」です。これは、不動産業者が買い手や借り手に対して取引物件や取引条件、その他の不動産にかかわる事項を説明するものです。これは必ず対面で、宅地建物取引士が実施しなければなりません。
この重要事項説明時に用いる重要事項説明書も、先述のように電子化する社会実験が進められています。書類を不動産契約時に毎回郵送でやり取りしたり、宅地建物取引士と対面でやり取りを行ったりすることは利便性を欠くとして、今後電子化が進むとともに重要事項説明も不要となることが期待されます。

電子契約書で不動産売買をスムーズに

これまで紙の契約書で必要だった作業も、電子契約書の導入で不要となることがあります。不動産売買でかかっていた手間や負担、時間も電子契約書で短縮も期待できます。電子契約書を活用し、スムーズな不動産売買につなげてみてはいかがでしょうか。

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