現在のデジタル社会では様々なものの電子化が進み、現実空間での活動がコンピューターやネットワークによって構築されるサイバー空間に置き換わり一体化が加速しています。
その一つに紙媒体を撤廃し、電子でのやり取りに特化した電子契約などが挙げられます。
安心して行うために必要不可欠なのがトラストサービスです。
今回はトラストサービスとはなにか、その種類や今後の見通しについて、詳しく解説いたします。

トラストサービスとは

まずはトラストサービスがどのようなものかをご紹介いたします。

トラストサービスとはなにか

サイバー空間を現実世界と深く結びつけることによってデジタル社会のデータが信頼性の高いものであり、改ざんが行われていないことを証明するためのサービスを「トラストサービス」と呼びます。
トラストサービスの中には法で定められたものもあるため、電子契約を結ぶ際にはトラストサービスの導入が必要不可欠といえるでしょう。

総務省もトラストサービスの技術を高く評価しており、有識者らを集めた「トラストサービス検討ワーキンググループ」を設置、トラストサービスが抱える課題や法の改正など様々な議論が繰り返されてきました。

トラストサービスの現状

先ほどの有識者会議にて、トラストサービスの活用動向アンケートを経団連デジタルエコノミー推進委員会加盟に加盟しているうち39社に実施した結果、トラストサービスを使用している会社は4割程度ということが判明しました。
書類の電子化・ペーパーレス化が進む社会において、今後トラストサービスはさらなる普及拡大が見込まれます。

トラストサービスの種類

トラストサービスには現在5つの種類が存在します。それぞれがどのような特徴を持っているのかについてご説明いたします。

電子署名

電子署名とは暗号化した公開鍵を用いて「書類データが正式なものであり、データの内容が改ざんされていないこと」を証明するトラストサービスの1つです。
電子署名は電子署名法により紙の契約書と同等レベルの法的効力を持っています。電子認証局が発行した電子証明書を電子署名に付与することで電子署名法の法令基準を満たすことが可能になります。

ウェブサイト認証

正当な会社や団体によって開設されたウェブサイトを確認する仕組みを「ウェブサイト認証」といいます。CA/ブラウザフォーラムにてウェブサイトの認証を電子証明書で発行する認証事業者に求める基準が議論されています。

モノの正当性を確認

人だけでなくIoTの普及により「モノ」がサイバー空間に接続するようになったため、モノから発せられるデータの正当性を確保することが重要になりました。モノの正当性に関する制度はまだ存在していないため、なりすまし防止などを未然に防ぐ仕組みを考えられていますが、技術的制約やコストといった課題があるのが現状です。

タイムスタンプ

電子データが存在する時刻と、それ以後の時刻にデータの内容改ざんが行われていないことを証明するトラストサービスをタイムスタンプといいます。
一般社団法人日本データ通信協会が認定をしており民間の認定スキームの下、タイムスタンプ業者が提供を行っています。しかし民間企業でのサービス提供であることから、サービス運用の永続性等に不安があるといった意見もあります。

eシール

電子データの発信元がどの組織であるかを示し、データを発信した組織の正当性を確認するために用いられる暗号等がeシールです。
電子署名が付された後にデータの改ざんがないことを確認可能にする仕組みであり、個人ではなく法人向けのトラストサービスになります。国の基準に基づく民間の認定制度があります。

トラストサービスの今後は?

様々なトラストサービスが普及していく中、現状では法整備や国による基準がまだ整っておらず、サービスの永続性や国際的に通用するのかを不安視する声が多くあがっています。
日本でもトラストサービス検討ワーキンググループによってトラストサービスの法制化を議論されていましたが、既存の法律によって新たに法を定めることや法改正が難しいため見送られてしまいました。
国際的にも電子化の波はきており、アメリカやEU加盟国では電子契約が一般的なものとして広く普及しています。日本でも法制化にはまだ至っていませんが、EUやアメリカの制度に倣って制度の準備が進んでいるため、トラストサービスがより安心なものとして法的に定められる日はそう遠くないと考えられます。

まとめ

日本ではIoT住宅などの普及が始まっており、企業だけではなく個人やモノを守るためにもトラストサービスは今後必要なものになってくるといえます。また、法人といった組織向けトラストサービス以外にも、個人向けのトラストサービスが新しく生まれることも考えられます。
安心して電子化社会を生きるためには、社会全体でトラストサービスの普及を考えるべきではないでしょうか。

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