電子契約は印紙税が非課税!電子契約書の導入前に把握すべき注意点とは
契約書を扱う上で必ずかかる税金の印紙税。
積み重なると大きなコストになってしまう税金ですが、電子契約書にはこの印紙税がかかりません。しかし、電子契約書は扱う上でいくつか注意点があります。
今回は印字税と電子契約書について解説いたします。
印紙税とは
印紙税とは
経済活動の中で作成される課税文書を対象に徴収される税金のことを印紙税といいます。主に領収書や契約書などに課税されるため、身近な税金の一つとして知られているのではないでしょうか。
収入印紙とは
収入印紙とは印紙税を支払っていることを証明するための証票です。印紙税の納付は一部の例外を除き、作成された課税対象の文書にある契約金額に応じて設定された額の収入印紙を貼り付けした後、消印して届ける形で行われます。
収入印紙の種類は全部で31種類あり、1円~10万円までの金額です。
契約は収入印紙が無くても有効
ここでひとつ確認しておきたいのが、「収入印紙が無くても契約自体は成立する」という点です。というのも契約というものは双方の合意があれば成立するものであり、収入印紙を貼っていないから無効、ということにはなりません。しかし、契約書に収入印紙が貼られていなかった場合、脱税扱いになってしまします。発覚した場合、2倍の印紙税を徴収されてしまうので注意が必要です。
電子契約は非課税
電子契約の仕組み
電子契約の仕組みは、まず作成した契約書に電子署名とタイムスタンプを付与し、PDFに変換して相手方に送付します。相手方は内容を確認し、同様に電子署名とタイムスタンプを付与してPDFに変換し、返送することで契約が完了するというものです。
なぜ非課税?
印紙税法基本通達第44条によると、「法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。」と記されています。
つまり、紙面に文章を書いて交付することが「作成」という行為に該当し、課税対象になるという事が解ります。
電子契約書は電子データのため、相手方に送信はしても交付は行われません。
従って電子契約を締結することは、上記のような課税文書の「作成」の行為に該当しないため、印紙税が課税されないという扱いになります。これが「電子契約書は印紙税が非課税」といわれる所以です。
電子契約書をコピーしても大丈夫
電子契約書をコピーしてプリントアウトした場合は、あくまでも電子データの複製物に過ぎないため、印紙税の課税対象の文書として取り扱われることはありません。そのため電子契約書をコピーしても問題はありません。
電子契約書の注意点
電子契約ができない契約書もある
現在では、ほとんどの契約において電子化が許可されており、電子契約書を使った契約が利用可能です。しかし、法律によって電子契約がいまだに利用できない契約も一部存在します。代表的な契約の種類は以下の通りです。
〇投資信託契約の約款(投資信託及び投資法人に関する法律5条)
〇訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における書面交付義務(特定商品取引法4条など)
〇定期借地契約(借地借家法22条)
〇定期建物賃貸借契約(借地借家法38条1項)
これらの契約は電子契約を結ぶことができません。
電子契約の導入を考える際は、業務内でこれらの契約書を取り扱っているかどうか確認をしておく必要があります。
社内理解が必要
電子契約書を導入する際は、社内での電子契約書導入に対する理解を得る必要があります。
これまでの業務フローを見直さなければならなかったり、コスト面や管理体制についての説明が必要だったりと、社内理解を疎かにしてしまうと、折角の電子契約書のメリットを活かせないという事になってしまいかねません。
なぜ導入が必要なのか、どのような効果があり、どのような部分が変わるのか、業務内でどこを変える必要があるのかなどを明確にし、社内でしっかりと共有することが必要です。
取引先の理解も必要
社内だけでなく、契約を結ぶ取引先の理解を得る必要もあります。
というのも、契約は双方の合意のもとで行われるものであり、取引先に電子契約による契約を拒まれた場合は、相手方に合わせて契約しなければならないためです。
コンプライアンスが強化できる点など相手方にもメリットがある部分をしっかりと説明し、電子契約書導入に対する理解を得ることができるように努める必要があります。
まとめ
電子契約書は印紙税法の観点から「作成」された文書にみなされないため、印紙税の課税対象にはなりません。そのため電子契約書は印紙税が非課税であり、長い目で見ると大きなコスト削減のメリットにつながります。電子契約書を導入する際には、紹介した注意点をしっかりと理解することが必要といえます。