国土交通省は電子契約をどのように捉えている?電子契約書の未来とは
様々な企業で電子契約システムの導入が進んでいますが、行政もその例外ではありません。
特に国土交通省は社会実験を実施するなど、電子契約システムに関して高い関心を寄せています。
今回は国土交通省が電子契約システムに与える影響などについて解説いたします。
国土交通省と電子契約
社会実験が行われた
国土交通省は電子契約の促進を目的に2019年10月より「重要事項説明等の電磁方法による交付の社会実験」を行っています。これは賃貸契約において必須事項である重要事項の説明と重要事項説明書・賃貸借契約書の交付を従来の対面式ではなくテレビ電話を使って行い、電子契約を結ぶことに問題がないかを確認するというものです。
電子契約くんのサービス開始
「電子契約くん」は2019年10月から国土交通省が行った社会実験に対応する電子契約システムです。電子契約くんはブロックチェーンが基盤とされているため、非常に安全性の高い契約をオンライン上で行うことが可能になりました。
直轄事業の電子契約の全面導入
不動産業界だけでなく、公共工事の受発注にも電子システムが導入され始めています。
地方の建設情報を取りまとめる団体「地方建設専門誌の会」の報告(2019年6月20日)には「国土交通省は2019年8月より地方整備局や北海道開発局の本官契約案件などにも電子契約を導入することを決定し、2020年度には全面導入に移行する」とありますが、これは2018年度の直轄業務や工事において約200件の電子契約を試みたところ、いずれも大きなトラブルが起こらなかったため全面導入に踏み切った形です。
電子契約を用いることで契約の締結から支払い請求までの全てをシステム管理できるようになるため、書類の郵送コストや時間の削減につながり、また職員の負担軽減や書類の保管スペースも不要になるなどのメリットが大きいと見込まれた背景があります。
電子契約書の効果
電子契約書を用いることで期待できる主な効果が次の3点です。
手続きの時間の短縮
従来の紙の書類による手続きでは作成時間だけでなく、郵送後に相手側からの返送を待たなくてはなりませんでした。しかし、電子契約書に切り替えることで、完成後すぐに相手側とデータ共有することができます。そのため、業務の効率が格段に上がるようになります。
郵送コスト削減
紙の書類の場合、印紙税や送料が必要になるためコストが発生します。
電子契約書の場合オンライン上でやり取りが完結するため、送料や印紙税がかかりません。
そのため、コストの削減に非常に役立ちます。
保管コスト削減
紙の書類は契約が締結した後、法律によって一定期間保管しなければならず、書類を保管するためだけの広いスペースを確保する必要がありました。
特に契約件数の多い企業にとって膨大な書類の管理は大変な作業ですし、処分する際も労力が必要になります。
電子契約も紙の書類と同様に一定期間の保存が必要ですが、全てデータ化されているので広い保管スペースは不要になります。
賃貸借契約完全電子化について
2019年の10月に行われた社会実験「重要事項説明等の電磁方法による交付の社会実験」の結果をもとに国土交通省は賃貸契約の際に必要な重要事項説明書を電磁方式として認めるようなりました。
実験の結果
「重要事項説明等の電磁方法による交付の社会実験」に参加する企業113社のうち、電子書面交付に積極的な姿勢を見せた企業は3社程度だったことが判明しています。
これは、社会実験が2019年の10月から実施されたこともあり、不動産業界は新社会人や大学生、転勤をする人が多く訪れるため、新しいやり方を導入する余裕があまりなかったということが関係しているようです。
しかし企業側からは複数の電子システムのうちどれを導入すればいいのか分からないといった意見もあり、企業がまだ電子システムの内容について把握できていないという現状もあると考えられます。
企業の受け入れ態勢が整っていない?
電子契約が便利だということが分かっていても、知識が足りなければ先述したように「どのシステムを導入すべきか見当がつかない」ことも起こり得ます。また、賃貸契約を行う際に電子機器の操作に慣れている人は問題なく扱えますが、あまり電子機器に馴染みがない人の場合、不便に感じることもあるようです。
本格導入を前に、まずは企業側がより電子システムに関して詳しく知識を得るなど、多くの課題が残されているという現状があります。
2021年以降の開始を目指している
国土交通省は今回の社会実験を踏まえたうえで、今後の方向性について決定を行うとしています。予定では改正法案を作成したのち、2021年以降から電子契約の導入を目指すとされています。
まとめ
国土交通省の社会実験を見ると、まだまだ不動産業界にとって賃貸借契約の完全電子化には時間がかかるかもしれません。しかし、今後はより多くの分野でペーパーレス化が進み、電子契約がメインとなってくると予想されます。
国の方針が始まる前に、電子契約や電子契約書についてより深く知る必要があるのではないでしょうか。