電子契約書の数え方。「枚」「通」「部」のどれが正しい?
ビジネスでは様々な場面で正しい言葉づかいが求められ、一度でも誤ると「言葉づかいがなっていない人だ」と思われてしまうこともあります。今回はビジネスにおける最重要文書の契約書、電子契約書の正しい数え方についてご紹介しましょう。
契約書の正しい数え方
文書の数え方では「枚」「通」「部」の3つがよく使われます。では、契約書はどれが正しい数え方なのでしょうか。
「枚」「通」「部」の違い
先述したように、文書の数え方には主に「枚」「通」「部」の3つがあります。
・「枚」…1枚で成立する文書
・「通」…内容の通達に使用される文書
・「部」…複数枚で構成される文書
例えば、「枚」なら領収書やチラシ、届出書。「通」なら手紙や案内状、送付状、見舞状。「部」なら提案書やパンフレット、見積書、議事録などの数え方として使用されます。
契約書は「部」が一般的
では、契約書の正しい数え方ですが、企業間の契約書は複数枚にわたるのが一般的ですので「部」を使います。他社や同僚に契約書の作成を依頼する際には「次の会議までに、契約書を2部ほど印刷しておいてください」のように伝えるわけです。
ただし、「部」はあくまで一般的な数え方です。企業と個人、個人同士では1枚で成立する契約書も少なくないため、「枚」を使うこともあります。また、契約書を送付状と一緒に封筒に入れ、郵送する場合には「通」で数えることもあり、数え方はその状況によって変わるのです。
契約書は複数必要なのか?
なお、契約書では当事者の人数分だけ原本、写本を作成するのが一般的とされます。だからこそ、2部以上作成するわけですが、そもそもなぜ複数部も用意する必要があるのでしょうか。
契約とは当事者間で結ばれる「約束」にすぎません。お互いの権利や義務に関して、「こういう内容でいいよね」と意識の合意がされていれば契約は成立します。たとえ契約書として書面で残さなくても、口約束であっても法的効力はあるとみなされるのです。
しかし、口約束ではあとから「言った」「言わない」に発展する可能性があります。そのため、契約書として合意の内容を書面として残し、あとから揉めないよう予防しているわけです。
では、なぜ契約書を複数部も用意するのかですが、当事者の片方だけが文書を保持していると、改ざんされても気づけない可能性があるためです。当事者それぞれが原本、または写本を保持することであとから比較もでき、改ざんされないよう相互に監視もしやすくなります。
電子契約書でも数え方は同じ
紙媒体の契約書の数え方について、基本は「部」、あとは状況に応じて「枚」や「通」も適応できるとのことでした。では、紙媒体として残らない、電子契約書の場合はどうでしょうか。
実は、電子契約書でも「部」で数えるのが一般的です。そして、作成した電子契約書をメールなどでやり取りする際には「通」になりますし、もし紙媒体としてプリントアウトした場合には「枚」で数えることもあります。紙媒体の契約書と同様に、状況によって変わるわけです。
電子契約書は郵送のコスト がかからない
「数え方」で考えると紙媒体の契約書も電子契約書も、どちらも同じ「部」が基本です。ただし、数え方は同じでも、紙媒体と電子契約書では「紙がない」ことでいくつか違いがあります。
メールなどで簡単に送信できる
紙媒体の契約書をやり取りする場合、その場に当事者の全員が揃っていればそのまま手渡しできますが、別々の場所にいるのなら簡易書留などで郵送します。契約書は特定の相手に伝達する重要な文書である「信書」に分類され、郵便法により郵送以外では原則送れないためです。
対して、電子契約書は紙媒体ではないことから、郵便法の原則外なのでどのような方法でもやり取りできます。メールで直接送信してもいいですし、SNSやファイル転送サービス、クラウドストレージなどを活用してもいいので、郵便と比較して格段に手間も時間もかかりません。
何部作成してもコストは同じ
また、電子契約書では郵便代がかからないだけでなく、印紙代まで不要です。なぜなら、印紙税法によると印紙税が適応されるのは「作成した課税文書」で、この「作成」とは紙媒体を意味するため、紙媒体ではない電子契約書は適応外という見解が一般的だからです。
そのため、本来であれば原本、写本に関わらず受領金額が5万円以上の契約では「印紙税」が発生しますが、電子契約書ではたとえ何百万円、何千万円の契約を締結しても印紙税はかかりません。当事者ごとに何部の契約書を保有していても、手間もコストも同じなわけです。
ただし、上記の見解はあくまで世間一般のもので、法的に明記はされていません。今後、電子契約書がより普及する過程で、法的に別の見解が明記される可能性もあります。電子契約書を作成する際には、一度、司法書士や税理士など専門家に問い合わせるのがいいでしょう。
まとめ
紙媒体の契約書であれ、電子契約書であれ、数え方は「部」が基本です。そして、1枚で成立する契約書であれば「枚」を使うこともありますし、当事者間で郵送する場合には「通」で数えることも。結局のところ、契約書の数え方はその場の状況によって変わるのです。
しかし、数え方は同じでも、紙媒体では郵送が原則なのに対して、電子契約書ならメールなどでも可能。文書の作成、郵送の手間、コストを考えると電子契約書がお得です。