電子契約書でも税務調査に対応することは可能?具体的な要件も解説
税務署などが帳簿を確認する「税務調査」は電子契約の場合でも対応できるのでしょうか。
電子契約を導入した際に保存場所や保存期間など、迷ってしまうことも多いかもしれません。
今回は、電子契約書の税務調査への対応方法と保存方法を詳しくご紹介いたします。
税務調査にどう対応する?
紙の契約書と電子契約書の税務調査対応方法の違いをご説明いたします。
紙の契約書の場合
紙による契約書は、税法によって一定期間の保管期間を設けられています。保管期間は何に関する契約書なのかによって異なります。
紙の契約を行っている場合、税務調査官は保管されている契約書を基に調査をすることになります。申告に不備や漏れがあった場合、取引先の企業にまで税務調査が入ることもありますので、必ず保管期間を守りましょう。もし不備があると、追徴課税が発生することもあります。
スキャナ保存する際の注意点
データとして契約書を保管する場合、紙の契約書をスキャンして保存する方法もあります。しかし、紙の契約書をスキャナで取り込んで保存しても、民事訴訟法上は「コピー扱いになる」という点が問題です。きちんと締結した取引であっても、コピー扱いなので証拠として提出しても評価は高くありません。スキャナでデータを保存する際は、その点を決して忘れないようにしましょう。
電子契約書でも税務調査の対応は可能!
「締結した契約であってもスキャンしたものがコピー扱いなら電子契約書も同じ」だと思っていませんか?
電子契約書を扱う場合、「電子帳簿保存法」という法律を知っておかなければなりません。
電子帳簿保存法は平成10年に成立し、令和2年までの間に複数回の法改正が行われています。電子帳簿保存法10条には「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」という電子契約書の保存要件を記した項目があります。
電子契約書は電子帳簿保存法を守ることを前提に作成されているため、法的効力を保持しています。
よって、この項目に書かれた保存要件を守ることで電子データであっても税務調査が可能になります。また、電子契約書をプリントアウトして印刷する方法でも税務調査を受けることが可能です。
電子契約をしたら税務上の要件に沿って保存する
ここでは電子帳簿保存法と電子契約書を税務調査で扱う場合の要件についてご説明いたします。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿や書類(国税関連帳簿書類)を電子データとして保存する際の方法を定めた法律です。
国税関連帳簿書類は帳簿と書類の2つに分かれており、法人税上の帳簿(仕訳帳や総勘定元帳など)の場合、書類に事業年度開始日を電子帳簿の備え付け開始日に設定しなければなりません。
一方、法人税上の書類(注文書、契約書、領収書など)は課税期間の途中からであっても以後に作成した書類を電子データとして保存することができるとされています。
満たすべき具体的要件
電子契約書を公的な書類として扱う場合、以下の5点について注意が必要です。
①基本的な保存の義務
各税法に定められた期間に準ずるとされています。基本的な義務として、納税地で7年間の保存と決められています。データの保存先はデータセンターの所在地で問題ありませんが、納税地および事業所在地に、PC・ディスプレイ・プリンターなどがありネットワーク経由のアクセスが可能であることが条件になっています。
②真実性の確保
原則として、認定タイムスタンプが全ての書類に付与されていることが求められます。
認定タイムスタンプの代替法として、訂正および削除の防止に関する事務処理の規定を定めることでも可とされていますので、認定タイムスタンプの付与が難しい場合はこちらの方法を考えてみましょう。
③関係書類の備付
電子契約書やシステム・サービスに関する操作説明書やシステム概要書があることが必要です。誰でも利用方法が分かるようにマニュアルを用意しておきましょう。
④見読性の確保
納税地、または事業所など税務調査を受ける場所にディスプレイ、PC、プリンターがあり、いつでもプリントアウトできる状態にしておく必要があります。
⑤検索性の確保
電子契約書のシステムやサービスにおいて取引の履歴から政務調査対象年度等、特定の範囲にデータを絞り込み検索が可能なことが求められています。データの絞り込みは以下の3つの種類で検索できれば問題ないとされています。
・取引年月日、取引金額、取引相手等、主要項目が検索条件として設定可能なこと
・日付と金額の検索は範囲を指定して検索が可能なこと
・2つ以上の項目を組み合わせて任意検索が可能なこと
まとめ
紙の契約書は物理的に保管スペースを多く必要とし、調べる時も非常に労力が必要になる作業です。
電子契約書なら紙のように保管のスペースを必要とせず、また所轄税務署への事前届出が不要とされているので、スキャナで保存するよりも最初から電子契約書として保存した方が手間はかかりません。電子契約書が税務調査に使えるか不安に感じていた方も、安心して利用できることがお分かりいただけたかと思います。
ぜひ電子契約書の導入を検討してみてくださいね。