法的な拘束力を持つ契約を結んだ場合、万が一トラブルが発生して裁判になると、契約書を証拠として提出するケースが考えられます。
近年、ペーパーレス化が推進されてきたことにより、契約書を紙媒体から電子契約書に切り替えている事業者も増えているため、その法的有効性についてよく理解しておくことが大切です。

そこで本記事では、電子契約書の法的有効性や、電子契約において裁判になった場合の対応方法について詳しく説明します。

電子契約書の有効性について争われた判例はない

2020年4月の時点で、電子契約書の有効性について争われた判例は存在しません。つまり、紙媒体の契約書と同様に、電子契約書が文書として一般的に認められているといえます。

とはいえ、電子契約書が急速に普及してきたのは最近になってからなので、今後において電子契約書に関するトラブルが発生することも十分に考えられます。そのため、今後の動向に注意しながら電子契約書を利用することが大切です。

電子契約書が裁判で証拠力を発揮する理由

電子契約書は、裁判において証拠力を発揮します。その理由には以下の4つが挙げられます。

・e文書法で電磁的記録が認められている
・電子署名法で文書の有効性が定められている
・電子署名で契約者の意思を反映している
・タイムスタンプで非改ざん性を証明している

これらを理解しておけば、法的な根拠に基づいて電子契約書を利用できるようになります。

e文書法で電磁的記録が認められている

e文書法は、従来紙媒体で作成していた文書について、電磁的に作成することを認めている法律です。同じような法律として「電子帳簿保存法」がありますが、電子帳簿保存法は国税に関する文書を電子化することを認めた法律になっています。

e文書法は、契約書などのあらゆる文書を電子データとして保存できることを定めたものなので、この法律を理解しておくことは特に大切なことです。

電子署名法で文書の有効性が定められている

文書を電子ファイルとして保存すると、直接サインや押印ができなくなります。しかし、電子署名を利用することで、文書の真正性を高めることが可能です。
電子署名法は、電子ファイルとして記録された文書が法律上どのように取り扱われるかを定めたもので、必要な条件を満たす方法で署名されていれば、証拠として有効であることが示されています。

電子署名で契約者の意思を反映している

電子署名法に基づいた方法で電子署名が施されていれば、本人が作成した文書であることを証明できるようになり、法的にも本人の意思が書類に反映されていると判断されます。
そのため、押印のある紙媒体の文書と同様に、電子署名が施された契約書であれば、正式に契約が成立した文書であることが裁判において証明できるのです。

タイムスタンプで非改ざん性を証明している

電子署名と同時に文書にタイムスタンプを施すことで、電子契約書を作成した以降に文書が改ざんされていないことや、タイムスタンプが施された時点で文書が存在していることを証明できるようになります。

文書が作成された日時は、信頼性のある認証局が証明してくれるため、電子文書のハッシュ値と認証局が発行したハッシュ値を比較することで、契約後でも文書の真正性を容易に検証可能です。

電子契約で裁判になった場合の対応方法

これまでの判例がないことを考慮すると、電子契約について裁判になった場合に備えて適切な対応方法を身につけておく必要があります。
ここからは、裁判になった場合の具体的な対応方法について説明します。

相手が契約書の有効性を認めているかを確認

電子契約をめぐって裁判になった場合、まずは相手が契約書の有効性について認められているかどうかを確認することが大切です。文書の有効性を認めていない場合、具体的にどの部分を認めていないのかを明らかにすると、それに応じた対応ができるようになります。

必要なデータを電子媒体で証拠として提出

電子契約書を証拠として裁判所に提出する場合、必要なデータを紙媒体に印刷して提出するのではなく、CD-Rなどの電子媒体で提出します。その際、提出したデータが改ざんされたものでないことを証明するために、ファイルのハッシュ値を取得しておくなど、証拠保全をするとともに真正性のあるメタデータであることを明らかにしておくことが大切です。

認証局や電子契約サーバー管理者の陳述書を提出

電子契約書が真正なものであることを証明するために、場合によってはタイムスタンプ電子署名の認証局や、電子契約サーバー管理者に陳述書の記載提出を依頼する必要があります。
当事者だけでは証拠力を高められない場合、陳述書のような客観的な証拠を添付することで、文書としての証拠力を上げることにつながるのです。

電子契約に関する裁判に備えておくことが大切

今回は、電子契約における判例の有無や、電子契約書が文書としての証拠力を持つ理由、電子契約をめぐってトラブルになった場合の対応方法について説明しました。
トラブルを回避できるように適切な文書を作成することが大切ですが、万が一裁判に発展した場合のことを考えて、適切に対応できるような知識を身につけておきましょう。

電子契約書の記事