近年契約を行う際、紙ではなく電子で契約書を作成するという企業が増えてきています。電子契約書の需要が高まっていることに伴い、電子委任状についての法律が施行されました。
今回は電子契約における電子委任状の役割や仕組みを詳しく解説いたします。

電子契約とは

電子契約って?

電子契約とは、電子ファイルをオンライン上で交換し、電子署名をすることで契約を締結させる方法です。働き方改革におけるリモートワークの普及とともに多くの企業から注目が集まっています。

電子契約を導入するメリット

<コスト削減>
契約に紙を用いた場合、印刷に必要な紙やプリンターのインク代、印紙税代や郵送料といったコストが発生していました。しかし、電子契約を導入することでこれらを節約することができるため大幅なコスト削減につながります。

<業務の効率化>
紙の契約書の場合、作成から印刷、製本、郵送、相手からの返送といった工程を経るため、契約の締結に至るまで長ければ2週間以上の時間を要すことも珍しくありません。
しかし電子契約書であれば、オンライン上でやりとりができるので早ければ10分程度で契約を締結させることができます。契約締結の効率化を図るのであれば電子契約書は非常に便利な存在といえます。

<コンプライアンスの強化>
紙の契約書は法律で決められた期間保管をしなくてはなりませんが、保管中にデータの改ざんや紛失のリスクがあるため、十分気を付けなければなりません。
電子契約であれば、電子署名とタイプスタンプを付与することでデータの改ざんができなくなり紛失の心配もありません。また、誤ってデータを紛失してしまった場合でも復元が可能です。さらに、電子データなので紙の契約書のように保管場所を必要としません。
※法律で定められた期間、データとして保管することは必要です。

電子署名の仕組み

電子署名とは公開鍵暗号システムによって電子ファイルの作成者を証明するシステムです。
暗号化鍵と復号鍵を一対で作成し、復号鍵のみを公開用に使います。もう一方の暗号化鍵は未公開となっており、パスワードで管理するため作成者でなければわからない仕組みです。

電子委任状とは

電子委任状の役割

電子署名は電子委任状においても活躍します。
電子委任状とは、企業の代表者が役職者に代理権を与えたことを表示する電子証明です。電子委任状はオンライン上ですぐに契約を結ぶことができるので、契約締結までの時間を短縮させるツールとも言い換えることができます。つまり、これまでのように代表者が押印する手間を省けるため、契約業務を効率的に進めることが可能になります。

電子委任状の仕組み

電子委任状は紙の委任状と同じく、法に則って代理権を授与したことを証明しなければなりません。
流れとして、役職者に代理権を授与した代表者は、権利を授与したことを電子委任状の取り扱い業者に登録します。
担当者は取引先と契約交渉を行い、代理権の範囲内であると認められれば、そのまま契約を結ぶことが可能となります。取引先の担当者は電子委任状の取得が可能であり、契約内容が代理権の範囲内かどうかをあらかじめ確認することができます。

代理権授与について

代理権を授与する際は以下の点を明確にしておく必要があります。

①委任者と受任者
②具体的な代理権の内容
③代理権の制限の有無
④代理権の有効期限

ほかにも、取引金額の上限など必要なことがあれば追記します。
代理権が曖昧な状態では取引先が誤った捉え方をしてトラブルに発展してしまう恐れがあります。

電子委任状の普及

代表者が押印することが少ないという事実

これまで企業間で電子契約を結ぶ際、代表者自らが電子署名を行わなければならないということが前提にありました。しかし、実際には代表者が全ての契約書に電子署名をすることは現実的ではありません。
電子委任状法が制定されたことにより、代表者は役職者に代理権を授与、取引先は代理権を自ら確認できるようになり契約締結がスムーズに行えるようになりました。

電子委任状法

電子委任状法とは、電子委任状を普及させるための方針を定めたもので平成30年1月1日より施行されています。
電子委任状法には、基本指針のほか電子委任状等の定義、電子委任状取扱業務及び認定制度などが規定されています。
代理権授与を表すことを目的に、法人から委託された電子委任状保管業者が関係者に電子委任状を提示・提出する際、取扱に関する認定制度が設けられていることにより、手続きを効率化しデジタルファーストの促進を図ることを目的とした法律です。

代理権確認の義務化はされる?

現在、代理権確認の義務化はされていません。
電子委任状は業務を効率よく進めるための手法であるため、確認が義務化されると時間やコストがかかるからです。
デジタルファーストが促進されている現在において、義務化はあまり現実的ではないといえるでしょう。また、会社法14条1項で認められている取引の安全保護の考え方が変化する必要もあります。絶対にないとは言い切れないものの、しばらくの間は義務化がされることはないと考えられるでしょう。

まとめ

今まで紙媒体の契約書や委任状を扱っていた企業にとって、新たに電子委任状を導入するということは不安な面もあるかもしれません。
しかし、業務の効率化やコスト削減効果が見込めることを鑑みると電子委任状の導入は非常に有効な手段です。
働き方改革が推奨されるこの機会に導入を検討してみてもいいかもしれません。

電子契約書の記事