個人や企業単位で、多種多様な契約が取り交わされます。その際、契約書は紙ベースが常識という考えが一般的でした。しかし近年、この契約書をデジタル化した「電子契約書」の導入が増えています。そこで、電子契約書の基本情報と紙の契約書と同じ法的効力を持たせるために必要な要件について解説します。

紙の契約書に取って代わりつつある電子契約書とは

電子契約書とは、従来使われてきた紙の契約書とどのような違いがあるものなのでしょうか。まずは、電子契約書の基本情報を見ていきましょう。

インターネット上で契約が交わせる

これまで紙の契約書では、実際に契約書を手に取った上で内容を確認し、押印して初めて契約締結となっていました。
電子契約書は、インターネット上でファイルのやり取りを行って契約を交わします。電子契約書なら、従来紙と印鑑で行われてきた契約をネット上のみで完結できるというわけです。

紙の契約書と同等の効力を持つ

紙の契約書に慣れていると、ネット上の電子契約書に本当に効力があるのかと疑問に感じる人もいるでしょう。
電子契約書の効力については、2001年に施行された「電子署名法」によって「本人による電子署名が行われていれば、真正に成立したものと推定される」と定められています。
つまり、電子署名がある電子契約書は、紙の契約書と同等の効力を持つのです。

法整備が進み電子契約の導入が容易に

先ほど少し触れた電子署名法が施行された2001年以降、「電子帳簿保存法」や「e-文書法」など、電子契約書にかかわる法整備が進みました。公的にも電子契約書の効力が証明されたことで、企業において電子契約書の導入が容易になりました。
現在では、約4割の企業が電子契約書を導入しているといわれるほどで、今後も導入は進んでいくと考えられます。

セキュリティ強化がしやすい

紙の契約書の方が、電子契約書より安全という印象を持っている人は多いかもしれません。しかし、紙の契約書に用いられる押印は偽造されても分かりづらいこともあり、実際には紙の契約書の方がセキュリティ面で優れているとはいえません。
これに対し、電子契約書で押印の代わりに使用する電子署名は偽造がほぼ不可能であるため、成りすましの心配が減ります。電子契約サービスではさまざまなセキュリティ対策を講じており、契約締結におけるセキュリティを強固にできるのも、電子契約書のメリットです。

すべての契約書を電子化できるわけではない

紙の契約書にはないメリットが多い電子契約書ですが、まだまだ完全に普及しているとはいえないのが現状です。電子契約では、双方が電子契約を利用できる環境にないと利用できないため、どちらか一方が電子契約を未導入の場合、電子契約書は使えません。
また、必ずしもすべての契約を電子化できるわけではないため、すでに電子契約書を導入している企業であっても、紙の契約書との併用が必要です。

電子契約書の各種要件を知っておこう

電子契約書を紙の契約書と同等の効力を持たせるためには、一定の要件を満たす必要があります。電子契約書を使用する際には、この要件を必ず知っておきましょう。

紙の契約書と同じ法的効力を持たせる要件とは

電子契約書は、先述のように効力が証明されているものです。しかし、紙の契約書と同等の法的効力を持たせるためには、一定の要件を満たさなければなりません。
まず、電子契約書に必須である電子署名があること。電子契約書では、電子署名は押印や署名と同等の効力があるからです。
そして、電子署名とともに「タイムスタンプ」も必須です。電子署名は署名した時刻は確認できますが、その時刻は使用した端末に依存してしまいます。署名に使った端末を操作すると、改ざんも不可能ではありません。そこで重要なものが、タイムスタンプです。
タイムスタンプとは、電子署名が正しい時刻に署名されたことを証明するものです。また、署名した際にその契約書が存在していたこと、署名後に契約書の改ざんが行われていないことも証明します。

電子契約書の保存要件

契約書は、基本的に一定期間保管する必要があります。保管期間は契約書の種類によって異なりますが5~15年、契約書によっては保管期間に限度がないものも存在します。
紙の契約書は増えていく一方で、保管や管理に困ることも少なくありません。一方、電子契約書であれば一定の条件を満たせば電子データとしての保管が可能で、保管期間は紙の契約書と同じです。

電子契約書の要件を知り正しい書面を作成しよう

電子署名やタイムスタンプのような要件を満たさなければ、法的効力を持つ電子契約書の作成はできません。今回紹介した必要な要件を押さえ、正しい書面を作りましょう。

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